ご主人の旅立ちから3年、生きる気力を取り戻せたのは〝言の葉〟
万葉の歌人は湖に沈む夕日を眺めながら恋の歌を残しました。平成の筆人は北浦の夕陽を見つめながら、今を生きる為の〝言の葉〟をたくさん残して、主を亡くしても生きてゆけるようにと〝言の葉〟に〝愛と絆〟を託しました。そこには夫婦の絆が今も息づいているようです。
指定された時間は17:05頃ということで、今日は北浦の美しい夕陽と共に暮らしている山越さんを訪ねました。時間指定はこの時間帯の夕陽が、一番きれいに見えるというのが理由です。
なるほど、この日の鹿嶋地区(軽度:140.622・緯度35.963・標高37m)の日の入りの時刻を調べると、17:06:41でした。納得です。
そして、その夕陽の情景はこれまでに見たこともないほど美しく、湖は光輝いています。この夕陽を私達に見せたくて時間指定があったのですね。しっかりと目に焼き付けてきました。
絶景の夕陽が見られる山越さんのお宅は、目の前に北浦が広がり、さえぎるものが何もありません。
この何も無い景色が気に入ってここに移住を決めたという山越さんご夫婦ですが、実は3年前にご主人はお亡くなりになりました。慢性関節リウマチにより病んでから15年、ここ鹿嶋には5年間を過ごされました。
このお家にはいたるところに病気のご主人を気遣う工夫がされていました。たとえば大きなお風呂は湯船に浸かりながらストレートに窓越しの夕陽をながめることができます。ウッドデッキのテラスは湖方向にテーブルをしつらえ、並んで夕陽が見られるように・・等々。
ご主人が旅立たれてから3年が経ち、ようやく元気を取り戻した奥様は、明るく朗らかに多くの思い出を語ってくださいました。
ご主人は〝釣り〟、奥様は〝野菜作り〟がしたくてここに来たのですが、お話しのいたる所でがんばりやの奥様の姿を見つけることが出来ました。
64才の時に必要に駆られて取得した運転免許証にも驚かされましたが、畑にはジャガイモ・ニンジン・ラッカセイ・オクラ・アスパラガス・・等々、スーパーに並ぶほとんどの野菜がそろっています。
お隣の畑はご近所の農家の方が無償で貸して下さったので、そこでも作物を育てておられたのだそうです。そして何よりも感動した言葉があります。
私達は人との出会いに恵まれた事にいつも感謝しています。良い人との出会いがあったからこそ今の生活があるんです。
大和ハウジングさんとの出会いに始まって、良い大工さんに巡り合えて、そしてご近所の方々もいい人ばかりなんですよ。」と心からおっしゃった言葉には、奥様の人柄がにじみ出ているようで、心地良ささえ感じたものです。
またご夫婦を支えて下さったご友人の方々には何よりも感謝しておられました。
だからこそ、一人では広すぎる家だけれど、ここにずっと住み続けたいとお話しして下さいました。
今は猫1匹と暮らしていますが、それを支えている亡きご主人の愛情と絆がたっぷりと感じられる取材でした。それはご主人が残された多くの言葉にはっきりと表現されています。
「男の宝物はね 女房殿かもよ (そう思うことにしている) 真」(真ちゃんの言の葉集 山越眞一2007.10.1発行)
この詩集はご友人達の協力で発行されたものです。ぜひ読んでいただきたいと思わずにはいられません。また、Webサイトでもご覧になれますので、アドレスをご紹介します。
http://www.moaru.com/kotonohasyu/
夫婦って、こんなにも強い絆で結ばれるものなのですね・・。